本研究の目的は、ウラン238(^<238>U)にケイ素30(^<30>Si)をサブバリヤエネルギで反応させることで、超重元素の新同位体シーボーギウム264(^<264>Sg)を合成することを目的とする。^<238>Uはラグビーボール型に変形しているため、^<30>Siと^<238>Uは1次元モデルのクーロン障壁よりも低いエネルギーで反応できる。本年度は、^<30>Si+^<238>U反応における核分裂断面積の測定を行うことで、サブバリヤ領域の融合断面積の励起関数を測定した。この分布を決定することにより、蒸発残留核としての^<264>Sgの生成断面積を統計モデルで計算するとともに、合成に最適な反応エネルギーを決定した。実験は、日本原子力研究開発機構のタンデム加速器施設で行った。^<30>Siビームを160MeVから143MeVにわたって、10点変化させた。それぞれのエネルギーにおいて、ビーム軸に対して90、120、150°に設置した3組のΔE-E検出器で核分裂片を測定した。この検出器は、ガス検出器(ΔE)とシリコン検出器(E)からなり、これにより核分裂片を、散乱粒子など他の原子核と区別して記録した。核分裂断面積(融合断面積に近似できる)は、1次元モデルに対して5桁近く高い値を示し、^<238>Uの変形をとりいれたチャンネル結合法による計算に一致した。統計モデル計算の結果、^<264>Sgは重心系エネルギ132MeVで最大40pbの断面積であることを求めた。次年度、蒸発残留核^<264>Sgを合成するために、大強度の^<30>Siビームを天然ウランターゲットに照射して実験する。17年度にイオン源からの^<30>Siのビーム開発を行い、実験可能なビーム電流が得られる見込みである。実験に用いる酸化ウラン・ターゲットを作るためのスパッタリング装置を開発している。これはRF方式のスパッタリングで、高融点で安定性が期待できるウラン酸化物の薄膜を作る。
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