研究課題
近年、不安定核構造の実験データが国内外で多く出されているsd-pf殻領域は、魔法数の消滅など、原子核物理の基礎的な問題と関係して大きな興味が持たれている。本研究は、核構造の定量的な記述が可能な殻模型を用いて魔法数の消滅に代表される殻構造の変化を定量的に記述することを目的としてものであるが、本年度はまず殻構造を変化させるメカニズムとして有力なテンソル力に焦点を当てて研究した。最近公表された、pf殻核を定量的に記述するGXPF1相互作用のテンソル力がどの程度の強さであるかをスピン・テンソル分解により調べた結果、パイ中間子とロー中間子の交換力と定量的に非常に良く一致することがわかった。また、sd殻核の代表的な相互作用であるUSD相互作用は中間子交換力のおよそ半分程度の強さしかないことがわかり、その両者のずれは、本研究代表者らが中性子数20領域の殻構造の変化を定量的に記述するために必要であると提案してきたモノポール相互作用の現象論的補正と一致した。これらの結果は、sd-pf殻核の殻構造の変化は中間子交換力のテンソル力によって説明できることを意味している。そして、sd-pf殻をつなぐ部分を従来よく使われてきたものからこの効果が定量的に入ったものに交換して得られた新たな相互作用により、二重閉殻核の候補であると提案されていたシリコン42核の殻模型計算を行った結果、テンソル力に起因する殻構造の変化のため、変形するという予言が与えられた。中性子数20領域の核構造研究に関して、国内外の実験グループとの共同研究も進んだ。例えば、リン31核の高スピン状態がエネルギー準位のみならず、状態間の電磁遷移確率を含めて殻模型計算で再現されることがわかり、また、ナトリウム29核の新たな励起状態が殻模型で予言されたものと一致することがわかった。
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すべて 雑誌論文 (6件)
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