前年度にYukawa型やGauss型など任意の関数形をもつ殻模型相互作用を作成するコードを完成させたことを受け、今年度は殻模型相互作用の構築を進展させた。前年度は、テンソル力が核構造へ与える影響を定性的な観点から調べたが、今年度はより定量的な解析と系統的な計算に力を注いだ。その一つとして、前年度採用されたパイ中間子とロー中間子の交換力によるテンソル力の強さの妥当性を検証した。その結果、その強さは、最近平均場計算の新たなテンソル力として提唱されているGT2相互作用のものとほぼ同じであることがわかり、前年度の計算がより定量的な観点からも妥当であることが確かめられた。さらに、より系統的な計算として、陽子数14から19、中性子数22から28までの低励起状態のエネルギー準位と電磁遷移確率の計算を遂行した。それによると、これまで採用されてきたMillener-Kurath型相互作用ではうまく再現できなかったカリウムやリン同位体の空孔準位が、テンソル力による殻進化により自然に再現されることが示された。また、つい最近実験されたシリコン40核の低い励起工ネルギーは中性子28の魔法数消滅と関係するのではないかと推測されていたが、この準位は実際は魔法数消滅とあまり関係せず、その隣のシリコン41の準位とより密接に関係するなど、中性子数28領域全体の新たな視点を提示した。
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