カリウム40及びアルゴン39に対する中性子捕獲反応(n、γ)断面積の評価を行うため、逆反応過程であるカリウム41、アルゴン40に対する光核反応(γ、n)断面積のエネルギー依存性を明らかにする。今回、蓄積リング電子とレーザービームとの相対論的コンプトン散乱よって生成される準単色ガンマ線ビームを用いて、中性子計測用のシンチレーション検出器の性能評価を行った。光核反応実験は、産業技術総合研究所の電子蓄積リング施設(テラス)において行った。エネルギー約610MeVの蓄積リング電子とNd:YAGレーザー(2倍高調波)を用いて、約13MeVの最大エネルギーをもつ準単色ガンマ線ビームを生成した。蓄積リング電子の電流値は最大250mA、レーザー出力は約5ワットであった。実験開始直後のターゲット位置でのガンマ線数は、毎秒約1.1×10^4個であった。このガンマ線ビームを、直径2cm、厚さ5mmの金ターゲットに照射し、光核反応(γ、n)において放出される即発中性子を、シンチレーション検出器を用いて測定した。シンチレーション検出器は、中性子に加え、ガンマ線に対しても感度があり、中性子とガンマ線の識別を行わなければならない。今回の実験条件では、ガンマ線ビームの金ターゲットによるコンプトン散乱光がバックグランド計数として観測される。本実験では、検出波形における立ち上がり時間及び減衰時間の差を利用した波形分別法を用いて、中性子とガンマ線の識別を行った。その結果、即発中性子とガンマ線が十分に分離でき、準単色ガンマ線ビームを用いた光核反応実験において、シンチレーション検出器による即発中性子の検出が可能であることを確認した。
|