レーザー光と高エネルギー電子との相対論的コンプトン散乱よって生成される準単色ガンマ線ビームを用いて、カリウム39の光反応断面積測定を行った。光核反応実験は、兵庫県立大学・高度科学技術研究所の電子蓄積リング施設(ニュースバル)において行った。エネルギー約1GeVの蓄積リング電子とNd : YAGレーザーを用いて、約17MeVの最大エネルギーをもつ準単色ガンマ線ビームを生成し、塩化カリウム標的に照射した。使用したガンマ線の強度は、毎秒約0.5〜1×10^6個であった。このガンマ線ビームを、直径15mm、厚さ20mm(2.2g/cm^2)の塩化カリウム標的に照射し、光核反応によってカリウム39を放射化し、ベータ崩壊の後に放出されるカリウム38のガンマ線を、ゲルマニウム検出器を用いて測定した。Eu-152、Y-88標準線源を用いて、ゲルマニウム検出器の検出効率の校正を行った。また、GSOシンチレーション検出器を用いて、入射ガンマ線の強度測定を行った。さらに、モンテカルロシミュレーションコードEGS4を用いて、入射ガンマ線のエネルギー分布を評価した。その結果、カリウム39からカリウム38の基底状態への光核反応断面積として、ガンマ線平均エネルギー15.9MeVに対して、0.5〜1mbが得られた。今後、入射ガンマ線強度のより精密な評価や標的材によるガンマ線の吸収の効果を考慮し、光核反応断面積のより正確な評価を行う予定である。
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