今回我々は、大強度陽子ビームラインにおいても使用できると考えられるOTR光を用いたプロファイルモニターの収量およびS/Nの評価、および既存のビームラインを用いたビームプロファイル測定のためのテスト実験を実行し、その解析を行った。 具体的には、まずKEK-PS EP2ビームラインにおいてテスト実験を行うことを想定し、その収量評価を行った。ビームが陽子であること、エネルギーが1 2GeVと比較的低いことによりγ値が低く、OTR光が広がる問題があることが分かり、できる限り集光できるようにレンズ系の仕様および設置位置を最適化し、またイメージ増幅器やカメラの必要なスペックを評価した。また、J-PARCのような大強度においては、標的の発熱が問題になるため、MARSやANSYSといった熱計算コードを用いて標的材料の選定を行った。その結果、OTRの発光効率と熱伝導性を考慮すると、6μm程度の薄いアルミニウムを用意すれば、水漏れなどにより真空度悪化などの問題を起こしかねない水冷などの処置をしなくても熱放射だけで十分な除熱が行えると評価できた。また、機器に必要な耐放射線性を見積もり、比較的安価な米国Thermo社製CIDカメラを画像取得に使用することに決定した。更にカメラ系の被写界深度を見積もり、標的からカメラ系までの距離を最適化した。 以上の評価に基づいて、プロトタイプのOTR検出器チェンバーおよびカメラシステムを構築し、KEK PS1 2GeV陽子加速器EP2ビームラインにおいてビームテストを行った。当テストにおいては、ビーム強度、ビーム位置、水平および垂直ビーム幅、標的材質、標的のビームに対する傾きを変化させつつデータ収集を行い、得られた映像を解析した。その結果、低エネルギー低強度の上記陽子ビームラインにおいてOTR光を観測することに成功した。また従来のプロファイルモニターと比較することにより、正しくビームを観測できていることを確認した。
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