ニュートリノ振動現象における精密測定およびappearance、□13の発見を目指して、東海村に建設中の大強度陽子加速器およびスーパーカミオカンデを用いた基線長295kmの長基線ニュートリノ振動実験(T2K実験)が進められている。本研究では、T2K実験において最大の誤差要因と予想される前置検出器からスーパーカミオカンデへの外挿誤差を軽減する方法の確立を目指している。 前置検出器からスーパーカミオカンデへの外挿の不定性は、ニュートリノの親粒子であるハドロンが、50GeVの一次陽子ビームで生成される際の不定性に起因する。さらに、ハドロンを生成する際の一次陽子ビームの標的上での位置や角度の不定性、ハドロンを収束させる電磁ホーンの設置精度や磁場の不定性も寄与することが、本研究で、ビームシミュレーションにより明らかになった。そこで、これらの不定性がどのようにニュートリノビームの不定性に寄与し、T2K実験からの要請を満たすにはこの不定性をどこまで小さくすれば良いかを明らかにした。ハドロン生成に関しては、測定データが存在せず、誤差を評価することさえ難しい。そこで、生成標的から約300メートルの位置でのニュートリノ・ビームのエネルギーと空間的広がりの間の関係を測定し、そこからハドロン生成の不定性に制限をつけ、特に、本研究においては、空間的広がりの情報を積極的に用いることにより、ニュートリノ相互作用の不定性に影響されることなく、スペクトルあるいはハドロン生成について情報を得る方法を提案することができた。
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