本研究では、大強度陽子加速器施設(J-PARC)で実現する50GeV-15・A陽子ビームの空間分布を測定するビームプロファイルモニタを開発する。ビームライン機器の放射線損傷を低減するため、非接触型のビームモニタが望まれる。これを実現するため、ビームが真空ダクト内を通過した際に残留ガス分子をイオン化して生じる電離電子を電場で収集するプロファイルモニタ(Residual Gas Ionization Profile Nonitor : RGIPM)を考案した。昨年度のビーム試験結果により、RGIPMはJ-PARCの大強度陽子ビームに対しても十分性能を発揮することが実証された。 RGIPMではSr-ferrite磁性体を用いた永久磁石を使用するが、磁性体材料の放射線耐性がモニタの寿命を決定する。J-PARCの遅い取り出しビームラインでは二次粒子生成標的や真空膜等ビームロスが大きいため、磁性体の放射線損傷による保持力の低下(減磁)が懸念される。これを定量的に評価するため、磁性体を70MeV-1.5μA陽子ビームに照射して放射線損傷の加速試験を行った。 ビーム照射試験にはSr-ferriteの他、Nd-Fe-BとSmlCo5、Sm2Co17の磁性体を照射した。積算線量で10^<14>-10^<17>proton/cm^2の範囲で照射を行った。照射した試料の表面磁場をガウスメータで測定し、磁束密度の減少を観測した。実験の結果、Sr-ferriteは10^<17>proton/cm^2の照射でも表面の磁束密度に変化は無いことがわかった。これはJ-PARC遅い取り出しビームラインでもっとも放射線レベルが高い二次粒子生成標的の上流に設置されるRGIPMの寿命として10年以上の線量に相当する。本年度の研究の結果、RGIPMはJ-PARCの遅い取り出しビームラインでも十分長期にわたって使用できることがわかった。
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