本研究の目的は、次世代大強度多目的線形加速器のための超高効率ビーム制御に関する研究である。線形加速器を効率的に運用する為には、異なるビームモード(電荷量・エネルギー)における安定運転が不可欠となる。このため、ビーム制御システムは、入射部から下流ラインにかけた統一的なオンラインビームシミュレーションを行い、最適なビーム運転パラメタが演算可能であることが望ましい。しかしながら、線形加速器ビームにおいて、高速オンラインビームシミュレーションの実現は非常に困難である。この要因の一つは、低エネルギー部(入射部)での空間電荷効果を考慮した高速計算アルゴリズムが存在しないためである。線形加速器の場合、入射部におけるビームシミュレーションを高精度に行わなければ、下流ラインでの計算結果が現実から大きくずれることとなる。 本年度は、本研究目的のために、高速ビームシミュレーション用計算機サーバを整備した。この計算機上において、KEK電子線形加速器における運転パラメタの読み出し及び設定を、EPICS制御システムから可能にするソフトウェア環境を構築し、パラメタの読み出し及び設定試験等をおこなった。また、入射部における高速なビームシミュレーションアルゴリズムの検討を開始し、ソフトウェアの基本的なデザインを進めている。これに加えて、申請者が既に開発した、高効率なビーム軌道補正アルゴリズムを、既存の高精度ビーム計算コードと融合させるソフトウェア構築を進めている。 来年度は、大容量データストレージシステムを構築するとともに、上述のソフトウェア環境の整備を目指す。その後、現実のビーム運転において、オンラインビームシミュレーション及び各種フィードバックループの試験を行い、現行のビーム運転との比較・評価を行う。
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