本年度は、我々のX線天文衛星「すざく」を無事打ち上げることに成功したのが、最大の成果である。申請者は、本衛星に搭載されるX線CCD(XIS)のソフト開発・初期運用・機上キャリブレーションなどで大きな貢献を果たした。申請者を中心としたグループはTeV望遠鏡で捉えられた銀河面上unID sourcesを追観測し、TeV帯域とX線帯域でのフラックスを比較した。その結果、これらの未同定天体が今までに見つかっていた宇宙線加速源からの放射(電子起源のシンクロトロンX線と逆コンプトンガンマ線)とは違う放射機構(陽子起源のπ0-gamma崩壊放射)をもつ可能性を示唆した。これは、宇宙線の主成分である陽子の加速現場を初めて観測的にとらえた、貴重な発見である。さらに、これらの天体が年をとった超新星残骸が分子雲に衝突している現場である可能性を示唆した。また、複数の歴史的に爆発の記録の残っている若い超新星残骸もすざくで観測し、特に10keV以上の硬X線帯域での観測に力を入れている。このほかの超新星残骸に関するトピックについてもすざくでの観測に積極的に参加し、X線CCDチームメンバーとしての助言、超新星残骸研究者としてのコメントなどを加えるなど、すざくチームの超新星残骸研究の中心人物となっている。 さらに、すでにあるアメリカのX線天文衛星Chandra、ヨーロッパの同衛星XMM-Newtonなどでも超新星残骸を観測、データ解析も行なった。その結果、新しいパルサー候補の発見、超新星残骸衝撃波面の空間構造を利用した超新星残骸の年齢・距離決定などについて、新たな知見を加えている。
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