昨年度に引き続き、フルポテンシャルKKRグリーン関数法コードにCPA (Coherent Potental Approximation)を導入した。KKR-CPA法はランダムに不純物が配置したような系を取り扱うことができる。昨年度はテスト段階だったものを、計算が不安定なところを改善し、実用的に使えるレベルまで持って行った。ペロフスカイト型およびパイライト型化合物の計算を行い、実験をうまく再現することを確認した。 また、本年度は具体的な核スピン制御の計算として、InAsにMnをドープした磁性半導体とAlSbのヘテロ構造についてKKR-CPA法を用いて電子状態計算を行い、超微細相互作用を計算した。スーパーセル法を用いて周期的な電場をかけることによって電場下の界面をシミュレートし、超微細相互作用への影響を調べた。非磁性イオンAsのサイトは電場なしでは超微細磁場はほとんどないが、電場をかけるとAsサイトでの超微細場の大きさは急激に増加し、ある程度までかけると飽和してこれ以上変化しない。これらのことを様々なサイズのスーパーセルを用いて比較し、構造による違いなどを検証した。 本年度は上記の手法に加えて、非平衡グリーン関数の導入を試みた。これまでの手法ではスーパーセル法を用いて周期的な電場をかけているが、非平衡グリーン関数を用いれば電流を流した定常非平衡状態における電子状態を知ることができる。非平衡グリーン関数を求める手法の確立に向けて、基礎を築いた。
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