近接した量子ドット間の相互作用や量子ドット間のエネルギー移動過程を明らかにすることを目的として、研究を展開している。均一サイズの量子ドット間の距離を1nmの精度で制御し、量子ドット間のエネルギー移動過程を光物性の観点から明らかにし、制御することが本研究課題の目指すゴールである。 高品質の量子ドットを作製するために、反応条件・環境を制御することが非常に重要となる。そこで、量子ドット作製用ガラス製反応ラインの整備を行った。目的の反応ラインは市販されていないため、ガラス器具及び真空ポンプを購入し、反応ラインを自作した。 超微粒子間のエネルギー移動を調べる上で、超微粒子間の距離を制御することが非常に重要となる。本年度の研究を通じ、まず、試料溶液の濃縮度により、フィルム試料中の量子ドット間平均距離を制御できることを明らかにした。量子ドット間距離の異なる種々の試料の発光減衰プロファイルから、CdS量子ドット間でエネルギー移動が生じていることを明確に示した。さらに、発光減衰プロファイルの温度依存性の結果から、CdS量子ドットにおけるダーク励起子状態の起源がスピン三重項励起子状態であることをはじめて明らかにした。 また、表面処理を施した石英基板にカチオン性ポリマーを吸着・製膜後、負の帯電性を有するコロイド量子ドット試料溶液に浸漬し、量子ドット層を形成させた。さらに、カチオン性ポリマーと量子ドットの交互積層膜を作製し、交互吸着法により量子ドット/ポリマーハイブリッド構造を作製できることを明らかにした。現在、カチオン性及びアニオン性ポリマーを交互に吸着・堆積させ、電解質ポリマー層の厚さにより、二つの量子ドット層間の距離を1nmの精度で制御することを試みている。
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