研究概要 |
電荷秩序を示す有機結晶θ-(BEDT-TTF)_2MZn(SCN)_4(M=Cs, Rb)に10μm程度の微小間隔の電極をつけ、高電場に対する応答を測定した。低温で非常に大きな非線形伝導特性を観測し、これが電荷密度波のスライディングとは異なる機構で起こることを見出した。この伝導特性から、電子間クーロン相互作用の遮蔽長の評価をすることができた。(Yamaguchi et al.Phys.Rev.Lett.96,136602(2006))またこの有機結晶の非線形伝導領域において、非常に大きく特異な正の磁気抵抗効果を観測した。電流電圧特性は大きな非線形性を示すにもかかわらず、磁気コンダクタンス比は電圧に依らない。また磁場の方向にもほとんど依存せず、横磁気抵抗の配置でも縦磁気抵抗の配置でも同様に観測される。このことから、この磁気抵抗効果は軌道効果によるものではなく電子スピンに関連した効果であると考えられる。また磁気コンダクタンス比がμ_BB/k_BTの簡単な関数で表されることがわかった。この磁気抵抗効果は、伝導電子のスピンと局在スピンが高磁場において同じ方向を向く確率が高くなり、パウリの原理によって伝導が抑制される、というこれまでに報告のない新しい機構によって起こっているかもしれない。(Yamaguchi et al.Phys.Rev.Lett.98,116602(2007))また、Mott絶縁体と考えられている有機結晶κ-(BEDT-TTF)_2Cu[N(CN)_2]Clにおいても同様の非線形伝導現象を見出し、反強磁性状態を反映した磁気抵抗効果を観測した。
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