本研究は、コヒーレントX線を利用した動的構造研究手法であるX線強度相関分光法を用いて、不規則系の動的構造研究手法の開発とその応用研究を目的としている。第三世代高輝度放射光光源の活用により、X線領域におけるコヒーレント光を利用した物性研究が近年開始されている。X線強度相関分光法は空間的・時間的に乱れた系のゆらぎを研究する上で極めて強力な実験手法となりつつある。また、原子スケールでしかも時間に関して広いダイナミックレンジを潜在的にもつため、幅広い応用研究が期待される。しかし、コヒーレンス強度の不足により、現在、適用可能な対象が〜10ms以上の比較的遅いダイナミクスに限定されている。これは、コヒーレント強度、検出器の制約等による。そこで、本研究では検出システムの基礎的開発を踏まえながら、本測定法のより広範な時間領域、様々な物性系への適用を念頭におきながら研究を進めている。動的構造研究の応用として、流体システムにおける動的臨界現象を適用させる。本年度は、大型放射光施設SPring-8の高フラックスビームライン(BL40XU)において、超臨界流体を達成させる高温高圧試料セルを用いてX線強度相関分光の測定をおこなった。アンジュレーター光からのコヒーレンス特性、さらに時間相関器、検出器等の評価等を含めた予備実験を行なった。結果として、S/Nが極めて低く、十分な統計精度をもつスペクトルの取得に至らなかった。平成18年度はバックグラウンドを減らす工夫をし、S/Nを向上させてスペクトルを得る。
|