研究概要 |
本研究の目的はπ-d系有機導体λ-(BETS)^_2Fe_xGa_<1-x>Cl_4(x=0〜1)の強磁場ESRによるπ-d相互作用の機構の微視的解明とサブミリ波を用いた磁場誘起超伝導相の制御である。 まず最初に行った事はλ=(BETS)_2Fe_xGa_<1-x>Cl_4(x=0〜1)の系統的な耳SEの測定である。この物質の基底状態はx=1塩で反強磁性絶縁体、x=0塩では超伝導体であると輸送測定や帯磁率のマクロな測定からわかっているが、今回のESRの測定よりx=0.4,0.5塩で反強磁性相と常磁性相が共存していることがわかった。これはESRという微視的な電子状態を調べる手法をとったために初めてわかった事である。またどの塩でも吸収が1個しか観測されてなかった事から、Feイオンの濃度に関係なく、π電子とd電子が非常に強い交換相互作用で結びついている事がわかった。さらに、サブミリ波領域でESR測定を行ったところ、π電子とd電子の短距離秩序化が起因のEPRシフトを初めて観測した。約40Kでこのシフトがはじまることから、π-d間の相互作用は約20Kであることが考えられる。 次にサブミリ波による磁場誘起超伝導体の相制御である。この物質の磁場誘起超伝導状態はd電子がπ電子に作る内部磁場を外部磁場が補償する事によって起こる。このときサブミリ汲を用いてESR遷移を起こすと磁気量子数が変化するため超伝導状態が壊れると考えられる。これを実証するために、磁場誘起超伝導相にてESRの測定を行いながら伝導度測定を同時に試みた。磁場を伝導面方向に印加して、磁場誘起超伝導状態でESR測定を行ったところ、電気抵抗に何の変化も起こらなかった。サブミリ波光源の安定性という問題もあったが、これは光で部分的に超伝導状態が壊れてもESR遷移が緩和し超伝導状態が復活するため、伝導度は変化しなかったと考えている。
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