[1]Pb置換Bi2201単結晶の育成 浮遊帯域溶融法により、BiサイトにPb原子を部分置換したBi2201単結晶を育成し、粉末x線回折、ICP、EPMAで評価した。その後、窒素ガス雰囲気中、種々の温度で熱処理して室温に急冷した結果、超伝導転移幅が小さい、種々のホール濃度を持つ単結晶試料の合成に成功した。 [2]強磁場中c軸抵抗 擬ギャップの磁場中抑制の始まる温度T^<**>を精密に求めるため、広くホール濃度を変化させたPb置換Bi2201単結晶のc軸抵抗を、最大50Tのパルス磁場中で測定した。その結果、T^<**>が擬ギャップの開く温度T^<*>よりも低温に位置することがわかった。 [3]低温STM/STS アンダードープの高温超伝導体で観測された4a×4a秩序状態の起源を明らかにするため、オーバードープPb置換Bi2201の低温STM/STSを行った。その結果、300mV以上の高バイアス電圧下では明瞭なBi(Pb)-O2次元面が観測され、置換されたPb原子の位置を同定することができた。また、BiサイトにPb原子を0.38だけ置換したBi2201において、b軸方向の長周期構造が抑制されていることを確認した。一方、バイアス電圧を下げていくと、150mVで10-30Å程度の領域のパッチ状あるいは帯状の明暗が部分的に出現し、50mVでほぼ全領域を占めることが分かった。今のところパッチ状構造の起源は明らかではないが、出現位置とPb原子位置に相関がないことから、少なくとも構造の乱れではなく電子相関が起源であると推察された。パッチ状構造には4a×4a秩序状態のような周期性が見られないが、測定した試料がオーバードープであるため、過剰なホールによって乱された秩序状態である可能性も考えられる。4a×4a秩序状態および超伝導との関係については、次年度に明らかにする予定である。
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