(A)長周期構造を持たないPb置換Bi2201における隠れた秩序状態 浮遊帯域溶融法で育成した最適ドープPb置換Bi2201単結晶のSTM測定を、様々なバイアス電圧下で行った結果、数100mVの高バイアス下では、Bi原子とPb原子で構成される明瞭な2次元原子面(Bi(Pb)-O面)が観測され、一方、低バイアス下では、電子相関によって生じる隠れた秩序状態が観測されることわかった。バイアス電圧を下げていくと、まず、50mV以下で2次元的なパッチ状明暗構造が出現し、さらに、10mV以下で短距離の一次元原子列構造が出現する。パッチ状構造は過剰ドープ試料でも観測されていたが[昨年度報告書]、かなり乱れていた。それに対し、今回は、より秩序だっているように見える。したがって、観測されたパッチ状構造は本来2次元的な秩序であり、その秩序化がドープされたホールによって邪魔されている可能性が高いと言える。また、ホール量の減少とともにパッチのサイズが小さくなることがわかった。明確な理由はわかっていないが、フェルミ面のホール量依存性に関係した変化と予想される。一方、一次元原子列構造については、原子列が数本集まって束になり、2つの直交するCu-O-Cu方向に沿ってランダムに配列していることがわかった。この結果は、CuO_2面の本質的な電子相関が、2次元的ではなく1次元的であることを示している。 (B)Pb置換Bi2201における長周期構造のPb濃度依存性 Pbを0.32置換したBi2201を浮遊帯域溶融法で育成し、Bi(Pb)-O面のSTM測定を行った結果、長周期構造領域と非長周期構造領域へと空間的に相分離していることがわかった。Pbを0.38置換したBi2201では長周期構造が完全に抑制されるが[昨年度報告書]、今回の結果から、周期が伸びた極限として長周期構造が消失するのではなく、相分離を経て消失することがわかった。
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