スピン、電荷、軌道、格子の自由度の結合は強相関電子系における研究の焦点である。本研究では、強磁場下に置けるラマン散乱装置の開発により、スピンと軌道あるいは格子の結合に関して研究した。ラマン分光装置の開発に関してはその最も重要な部分は、強磁場磁石という限られた空間に収まるように集光およびフィルター等の光学系を極小化し、かつファイバー光学系と結合するようにすることである。今回、全体として外径が1インチ以内に収まるようなラマン光学系を今回開発し、30テスラに至る実験が可能になった。実際、本光学系は20テスら超伝導磁石および30テスラハイブリッド磁石にあわせて設計を行っている。励起にはArレーザーを用い、検出はダブルモノクロメーターとCCD検出器を用いて行った。分解能に関しては、フォノンおよび電子励起を主な目的とし約500波数に設定した。これは励磁時間が限られるハイブリッド磁石を念頭においたものである。 実際のラマン散乱の実験としてはLaMnO3およびLaSrMnO3において、ホールドープが軌道励起に与える影響を調べた。SrをドープしたLaSrMnO3の実験では、多重フォノン励起が軌道波により媒介されている事が明らかになった。また酸素ドープ系においては、ホールドープにより電荷と軌道のゆらぎが誘起されることを見いだした。さらにLaCoO3においてヤンテラーフォノンの解析により、低温において混合スピン状態にあることが明らかになった。
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