研究概要 |
乱れを含む2次元超伝導体では電子局在(アンダーソン局在)と超伝導が競合しているため長年興味がもたれ,特に超伝導絶縁体転移(S-1転移)に関しては多くの実験,理論的研究が行われてきた.我々の研究室でも以前より超伝導薄膜にクエンチ凝縮法を用いて作成された均一なアモルファスニオブ薄膜を用いて零磁場および低磁場下での電気輸送特性の測定を行ってきた.しかしながら,既存の装置では零磁場で0.7K,磁場下(3T)で2Kでの測定であり絶対零度での量子相転移を議論するには厳しい状況であった. 今年度は先ず測定領域を低温・高磁場側へ拡張するために超高真空装置へ自作希釈冷凍機および超伝導磁石の導入を行った.自作希釈冷凍機は超高真空環境で運転可能なように以下の特徴を備えている.(I)予備冷却に熱交換ガスを使用しない.(II)ジュール・トムソン機構を利用して^3He-^4He混合ガスを液化する.(III)1Kポットを利用しないため全長150mmと非常に小型である.完成した装置を使用することにより磁場7T,最低温0.2Kの多重極限下でアモルファスニオブ薄膜の極低温ボルテックス状態とS-I転移の研究を行うことが可能になった. 次に上述の装置を用い超高真空(10^<・10>Torr)・極低温(6K以下)で作成した1nm程度のニオブ薄膜の電気抵抗をその場で測定した.アモルファスニオブ薄膜は強磁場(7T)中でも超伝導が完全に壊れることはなく,乱れの効果を強く受けていることが判った.今後,試料の膜厚および測定温度を変化させ系統的な測定を行う予定である.
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