研究課題
パルス磁場は、コンデンサバンクに充電したエネルギーを瞬時に放電し、その際に流れる大電流によって発生させる。実際に物性実験で通常使用されているコンデンサバンクは数百kJものエネルギーが蓄えられているので緻密かつ周到な準備を事前に行わなければ重大な事故が発生しかねない。本研究では、まず比較的安価な市販のコンデンサを使用してミニチュアモデルを作成して、パルス磁場を発生させる。これによって、パルス形状調整のためのクローバー抵抗器の調整やスイッチング方法の調整など、技術的な問題点を明らかにするとともに、検討を行うことにした。市販のタンタルコンデンサを並列につなぎ、全容量が0.11mFのミニチュアコンデンサバンクを二組用意した。パルス磁場を発生させるコイルは手製のソレノイドコイルを使用した。前年度にはこのようなミニチュアモデルを用いて二段のパルス磁場の発生に成功した。NMRを観測するには最大磁場付近において台形状に平らな磁場であるのが望ましい。そのような磁場波形を得るために、放電スイッチとして前年度までのサイリスタの代わりにMOS-FETを用いることにした。このシステムを用いてパルス磁場発生に成功し、さらに、硫酸銅水溶液を用いてパルス磁場下での^1H-NMR信号の観測に成功した。これにより十分に緩和時間が短い場合は比較的簡単にパルス磁場で観測可能であることがわかり、大きな進展があった。今後、二段階化による利点を明らかにしていくことが課題であり、緩和時間の異なる試料を用いて比較する必要がある。
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