VO_2薄膜、高温超伝導体YBa_2Cu_3O_y(YBCO)、Bi_2Sr_2Ca_<1-x>Y_xCu_2O_<8+δ>(Bi2212)などの赤外分光スペクトルの測定、解析を進めた。VO_2では、薄膜を用いて光学伝導度を正確に求める新たな方法を考案し、初めて金属-絶縁体転移による光学伝導度の変化をはっきりと観測した。さらに、光学伝導度における電子間相互作用と電子-格子相互作用の効果を明らかにした。また、YBCO、Bi2212などの高温超伝導体の光学伝導度の温度変化の詳細を明らかにし、既に報告されているLSCOとの違いを明らかにした。これらの高温超伝導体の光学伝導度は、コヒーレントなDrude成分と、中赤外吸収と呼ばれる、自己エネルギーによるインコヒーレントな成分でから成るとして解釈可能であることがわかった。また、中赤外吸収のドーピング依存性と角度分解光電子スペクトルとの対応から、LSCOにおける中赤外吸収のドーピング依存性が、ストライプの存在と関連があることがわかった。 また、^<16>O→^<18>O置換用のアニール装置を作成し、最適ドープのYBCO単結晶試料について実際に^<16>O→^<18>O置換を行った。その結果、最適ドープでは超伝導転移温度についてはほとんど同位体置換効果が見られないことを確認した。一方で、面内抵抗率の絶対値については、わずかながら同位体置換が見られ、^<16>O→^<18>O置換によりわずかに抵抗率が上がることを確認した。さらに、アンダードープのYBCO単結晶試料についても、^<16>O→^<18>O置換を進めている。
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