本研究課題の目的は、圧力誘起強磁性超伝導に関連した物理の中でも、磁性と共存している超伝導状態の解明とそれに付随する新しい物理の開拓である。 [1]交流法・緩和法の併用が可能な高圧下比熱測定セルを開発し、極低温(希釈冷凍機温度)における比熱測定装置の開発を行う。 [2]UGe_2の圧力誘起強磁性超伝導における超伝導対称性を研究する。さらに、スピン三重項超伝導や自己誘導渦糸状態・不均一超伝導状態(FFLO状態)の可能性を圧力・温度・磁場をパラメターとして探索し、新しい超伝導状態の発見・解明を目指す。 研究代表者が京都大学から名古屋大学に転出したため、研究計画の変更が必要となった。特に研究代表者が京都大学に在籍時に開発した「角度分解比熱測定装置」を以前のように使用することができなくなったため本文の最後に記述したような計画の変更が必要になった点を除けば、異動などによる時間のロスを考えても順調に計画を進めることができている。 本年度の研究実施計画である、 「(1)高圧下における比熱の超精密測定のために、試料の比熱のみを測定できる交流法・緩和法の併用が可能な銅ベリリウム製クランプ型(<2GPa)の高圧下比熱測定セル・比熱測定装置を開発。」 については実験環境を整えることができ、順調に開発を進められていると考えている。 「(2)重い電子系金属間化合物UGe_2の単結晶育成。」 については名古屋大学理学研究科の佐藤憲昭との共同研究によりUGe2の純良単結晶を準備することができた。 「(3)UGe2の圧力下・極低温における角度分解比熱測定。」 については研究代表者が京都大学から名古屋大学に転出したため、研究計画の変更が必要となると考えられる。今後の方針として、京都大学との共同研究や圧力下の極低温比熱測定をさらに進めて異方性の測定から超伝導対称性の決定にアプローチするということを考えている。
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