研究概要 |
本研究では、パイロクロア型酸化物R_2Mo_2O_7(R=Y,希土類)およびAOs_2O_7(A=K,Rb,Cs)、と層状酸化物Li_xCoO_2およびNa_xCoO_2を研究対象としている。今年度の実績については以下のとおりである。まず、R_2Mo_2O_7については、R^<3+>イオン半径の変化に伴う強磁性金属相-スピングラス絶縁体へのクロスオーバーの起源に関する知見を得る目的で、ダイヤモンドアンビルセル(DAC)を用いて圧力下(p≦4GPa)で直流磁化測定を行い、強磁性転移温度T_Cの圧力依存性を調べた。その結果、この系の磁性は、輸送特性とは対照的に、格子定数で一意に決まることが明らかにされた。またAOs_2O_7については、DACを用いた直流磁化測定より超伝導転移温度T_Cの圧力依存性を調べ、A=Kの系では1GPa付近でT_Cが極大を示し、その他の系では4GPaまでの圧力においてTcが単調に上昇することがわかった。層状酸化物Li_xCoO_2については、フローティングゾーン法で得たLiCoO_2バルク多結晶試料に対してソフト化学的な方法でLiを脱離させることによりLi_xCoO_2(x≧0.35)のバルク試料の作製に成功した。またLi脱離したすべての試料で170K付近でヒステリシスを伴う電気抵抗のとびが見られ、Co^<4+>のスピン転移に対応していると考えられる。層状酸化物Na_xCoO_2については、特にx=0.5の試料を作製し、金属-絶縁体(M-I)転移のメカニズムに関する知見を得る目的で圧力下(p≦3GPa)で電気抵抗測定を行った。その結果、M-I転移が起こる温度T_<MI>(〜53K)は加圧とともに単調に上昇する一方、反強磁性的磁気秩序が現われるT_N(〜90K)は圧力にほとんど依存しないことがわかった。この実験事実はT_<MI>とT_Nで起こる2つの転移が互いに独立したものであることを示唆している。
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