研究概要 |
1.強磁性・強誘電性共存系(マルチフェロイックス系)の代表例であるBiMnO_3について核磁気共鳴(NMR)測定を行った。主に低温の強磁性・強誘電性共存相での測定を行い、内部磁場を受けたMn核・Bi核のNMR信号の観測に成功した。詳細なスペクトル解析を通じて核が非常に大きな四重極相互作用を受けていることを示唆しているのではないかという結果が得られ、微視的な観点からこの系のd電子が軌道秩序を起こしていることの実験的証拠を得たのではと考えている。翌年度以降はそれを確かめるために二重共鳴法などの進んだNMR測定を行う予定である。また、緩和率測定を通じて電子の動的な性質を明らかにした。 2.BiMnO_3について強磁性/強誘電性がそれぞれ消失した場合のNMR信号観測を達成するために、高温で測定が行えるよう感度をあげるなどNMRスペクトロメーターの改良を行った。来年度以降改良装置を使って高温下での信号を探索する予定である。 3.翌年度以降のNMR測定に供するため、他のマルチフェロイックス系の合成を行った。Pb_2CoWO_6,Pb_2FeWO_6などについて合成条件の最適化を行い、試料を得た。 4.ハーフメタリック強磁性であるSr_2FeMoO_6について試料の合成およびNMR測定を行った。強磁性転移温度(420K)より下の160Kにおいて1/T_1Tが増大するという特異な振る舞いを示すことを明らかにした。 5.低温で重い電子状態を形成する化合物CaCu_3Ru_4O_<12>について試料の合成およびNMR測定を行い、Cu核のNMR信号の検出に成功した。重い電子系において局在電子を担う核の検出に成功したのは本研究が初めてである。 6.スクッテルダイト型化合物SrFe_4Sb_<12>,BaFe_4Sb_<12>に対するNMR測定を行った。結果、この化合物には強磁性揺らぎが強く内在し、臨界点近傍にあることを明らかにした。
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