1.試料合成・放射光実験 希土類金属であるイットリウム及びランタンにおいて、ダイヤモンドアンビルセルを用いて金属と高密度水素流体との直接反応を利用して水素化物の合成を行った。ダイヤモンドアンビルセルへの水素ガス充填は物質材料研究機構物質研究所に設置されているガス充填装置を使用して行った。このように合成した試料に対して、SPring-8の専用ビームラインBL22XUに設置されているダイヤモンドアンビルセル用回折計を使用して高圧下X線回折実験を行った。イットリウム水素化物では約50GPaまで、ランタン水素化物では約60GPaまでの圧力領域で放射光X線回折実験を行い、回折パターンの圧力変化を調べた。金属試料は金属箔から削り出した金属片を使用することにより、デバイリングの強度分布がほぼ均一で、また顕著な回折線幅の広がりが少ない回折パターンを得ることが出来た。 2.結果 (1)イットリウム水素化物 初期圧力で単相の3水素化物構造(hexagonal構造)が得られたる試料において、およそ50GPaまでの回折パターンの圧力変化を測定した。この結果、およそ12GPaから20GPaの広い圧力範囲に渡る中間相を経てhexagonal構造からfcc構造へ転移し、その後50GPaまでfcc構造からの相転移は観測されなかった。また、回折パターンを詳細に調べた結果、中間相はこれまで考えられていたようなhexagonal構造とfcc構造との二相共存状態でないことを明らかにした。さらに、圧力誘起絶縁体-金属転移が観測されてるおよそ23GPaにおいて、金属格子には大きな変化は無いことを確かめた。この結果は絶縁体-金属転移が水素原子の変位によって引き起こされることを示唆している。 (2)ランタン水素化物 ランタン水素化物において高圧下での相転移の探索を行った。ランタン水素化物は常温常圧で金属格子がfcc構造であるが、20GPa以上で構造相転移を起こすことが分かった。高圧相の特定は未だ出来ていない。また、イットリウム水素下物と異なり、60GPaまで金属化は観測されなかった。 3.装置整備 ダイヤモンドアンビルセルへの液化水素充填装置の立ち上げを行った。
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