研究概要 |
スピネル酸化物AlV204における金属絶縁体転移に関する理論的研究を行なっている。この物質では、物性を担うバナジウムイオン当たり平均2.5個のd電子がいるため、電荷のフラストレーションが期待される。ここでは、軌道の自由度をあらわに取り入れた多軌道ハバード模型を出発点に、この系における自己組織化・クラスター形成に関する研究を進めている。今年度は、実験で観測された7サイトクラスターの電子状態の計算を行なった。結果として、現実的なパラメタに対して基底状態が一重項状態となること、その発現に軌道の自由度が本質的な役割を果たしていること、この一重項形成により実験の帯磁率の温度依存性が説明できることなどを得た。これらの結果については現在論文投稿準備中である。 また、スピネル酸化物ACr204(A=Cd,Hg)に見られる半磁化プラトーの起源に関する理論的研究も行なっている。ここでは強いフラストレーションのもとで、スピン格子相互作用が本質的な役割を果たしていることを示した。実験結果との詳細な比較を行なうとともに、種々の新奇なスピン状態を理論的に見出し、その性質を明らかにした。結果の一部はすでに論文として発表済みであり、残りの部分は投稿準備中である。 また、国際会議(Statistical Physics of Quantum Systems, Sendai 2004 ; International Symposium on Quantum Spin Systems, Syonan, 2004 ; Physics of Strongly Correlated Electron Systems YKIS'04, Kyoto, 2004)のプロシーディングスとして、本研究課題に強く関連するトピックに関するこれまでの研究成果およびその後の進展を論文として発表した。
|