本年度は、半スカーミオン励起によって引き起こされる格子と非整合なスピン相関生成効果や角度分解光電子分光で観測されている擬ギャップについて主に研究を行った。高温超伝導体では中性子散乱実験から、反強磁性相関から期待される波数からずれた位置にピークが存在し、格子の周期と整合しない。この起源について半スカーミオン励起の観点からモンテカルロシミュレーションを行い、半スカーミオン励起と反スカーミオン励起のペアによって非整合ピークが生じえるという結果を得た。ペア生成にはクーロン相互作用が重要な役割を演じ、スピン相関によるペア消滅を妨げる。この結果については沖縄で開催された国際会議とドレスデンで行われた超伝導に関する国際会議にてポスター発表し、プロシーディングスが印刷中である。また、日本物理学会でも発表を行った。また、角度分解光電子分光実験ではフェルミ面が部分的にアーク状にしか観測されない。この起源について、通常のホッピングによる効果と半スカーミオン励起のスペクトルの両方を取り入れてホールのスペクトル関数を計算し、実験と対応するフェルミアークが生成されることを示した。他の理論ではスピンゆらぎの効果をホールの自己エネルギーに取り入れた計算が主であるが、半スカーミオン励起を考える場合には一体的な描像で理解することができることが特徴である。得られたホールの分散関係は、低ドープにおける角度分解光電子分光で得られたエネルギー分散と良い一致を示す。この結果については日本物理学会にて発表した。
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