過冷却状態における2原子分子性液体の計算機シミュレーションを行った。ただし、T_cと呼ばれるcrossover temperature以下の過冷却状態における緩和時間は長大であり、最も低い温度におけるシミュレーションはまだ進行中である。既にシミュレーションが終わっているT_c以上の温度における結果については論文として発表し、2005年7月にフランスのリールで行われた国際学会「5th International Discussion Meeting on Relaxations in Complex Systems」において、「Translational and rotational dynamics in supercooled molecular liquids」というタイトルで口頭発表した。T_c以下でのシミュレーションは来年度中には終了する予定であるが、暫定的な解析から、T_cを境にして並進運動と回転運動の温度依存性が異なっていること、また、回転運動が拡散的な運動からジャンプ的な運動へと変化していることが明らかになった。シミュレーションが完了し次第、速やかに詳細な解析に取り掛かりたいと考えている。特に、1 動的不均一性(緩和時間の分布)の大きさはどの程度で、その温度依存性はどうか? 2 動的不均一性の寿命はどれくらいか? 3 並進と回転運動における動的不均一性の相関はどれくらいあるのか? 4 動的不均一性の起源として、空間の不均一性が見られるのか? というような点に着目して解析を行いたいと考えている。さらに、これらの解析において必要とされるような、多体(multiple-point and multiple-time)の相関関数を求めるための基礎理論の構築を行う予定である。
|