研究課題
Hi-netで記録された近地地震の波形を収集・整理して、中規模より大きな地震について、Sコーダ波記録のデータベースを作成した。このデータに基づいて、日本国内における、Sコーダ波エネルギーの空間分布の非一様性を精査した。解析の結果、2-4、4-8Hzの周波数帯域では、Sコーダ波エネルギーは概ね一様に空間分布することが明らかになった。しかし、8-16、16-32Hzにおいては、地震発生から十分に時間が経過してもその空間分布は一様化されないことが確かめられた。この特徴は16-32Hz帯域で特に顕著であり、北海道中北部、東北地方西部から北陸地方、伊豆半島とその周辺、九州南西部において観測されたSコーダ波エネルギーは著しく小さかった。これらの地域では共通して、第四紀火山が密に分布し、地殻熱流量の値が他地域と比較して大きい。また、他地域に比べて小さなコーダQの値も報告されている[Jin and Aki(2005)]。これらのことより、リソスフェア内の温度に影響をうける内部減衰の地域変化がSコーダ波エネルギーの空間分布の非一様性の主要因である可能性が指摘された。特に東北地方については、新しく提案した拡散吸収方程式に基づいた数理的モデルを用いて、コーダ波エネルギーの非一様分布の特徴から内部減衰の地域性について調べた。その結果、周波数約10Hzにおいて、背弧側における平均的な内部減衰の大きさは、Hoshiba(1993)や櫻井(1995)が測定した前弧側のその値と比べて2倍程度大きいことが明らかになった。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (2件)
Bull.Seismol.Soc.Amer., (in press)
Tectonophysics, (in press)