研究課題
昨年度の研究(Yoshimoto et al.(2006))では、内部減衰の大きさが変化する散乱媒質中では、時間が十分に経過してもSコーダ波エネルギーの空間分布が一様化されないことを拡散吸収モデルを用いて定量的に示した。同研究では、東北地方においてHi-netで記録された近地地震の波形を解析し、Sコーダ波エネルギーの非一様分布は高周波数帯域で顕著であり、第四紀火山が密に分布して地殻熱流量の大きい日本海側で観測されるSコーダ波のエネルギーが小さくなることを明らかにした。本年度の研究においては、Sコーダ波エネルギーの空間分布に見られる非一様性の特徴をより広域(国内)にわたって評価した。具体的には、Hi-netで記録された18個の近地地震の波形を解析し、各観測点で計測されたSコーダ波エネルギーの大きさを特徴付ける固有の係数(Sコーダ波エネルギー係数)をサイト増幅特性の評価方法に準じたインバージョンアルゴリズムを用いて評価した。この係数は、観測点を含むやや広域な領域(数十km程度の領域)の地震波の内部減衰と散乱減衰によって特徴付けられる。求められたSコーダ波エネルギー係数の値は、サイト増幅特性によると考えられる一桁程度のばらつきを示すものの、第四紀火山が存在し地殻熱流量の大きい地域(北海道中北部、東北地方西部から北陸地方、伊豆半島周辺、九州南西部)で著しく小さな値(最大値の百分の一程度)をとることが示された。このような内部減衰が強いと考えられる地域について、Yoshimoto et al.(2006)の解析手法に基づいてリソスフェアの内部減衰のQ値を推定した結果、数百程度の値であることが明らかになった。
すべて 2007
すべて 雑誌論文 (2件)
Scattering of Short-Period Seismic Waves in Earth Heterogeneity (Advances in Geophysics, Elsevier.) (submitted)
月刊地球 29・4
ページ: 216-221