研究課題
本研究は、東アジア砂漠域における鉱物性エアロゾル(ダスト)の地表面からの放出と鉛直輸送に果たす乱流や対流の力学的な役割を数値モデルにより解明することを目的としている。用いる数値モデルは、非静力学雲モデルにダストの放出・輸送過程を組み込んだものであり、ラージエディシミュレーション(LES)の手法を用いた高解像度の数値シミュレーションを行う。まずLESを実施する準備として、境界層内の乾燥対流や積雲対流を解像できる程度の粗い解像度(500m)での数値シミュレーションを行い、境界層内の組織だった乱流構造や積雲による運送過程の解析を行った。計算の初期条件には、ゴビ砂漠南部における晴天時の観測データを用いた。計算により、日射による地面加熱により接地逆転層が崩壊して急速に混合層が発達する日変化の様子が再現され、観測データと定性的によく一致した結果が得られた。午前11時頃に急速に混合層が発達するのに応じて地面でのダストフラックスが生じ、境界層内の乾燥対流により素早く混合され、午後の積雲の発達に伴い、ダストの一部が自由対流圏へ輸送される様子がシミュレートされた。感度実験の結果、乾燥対流と積雲対流の両者が結合することにより、より多くのダストが放出され、より上空まで輸送されることが分かった。また、格子解像度をいく通りか変化させることでダストの輸送量がどの程度変わるのかについて調べ、粗くても2kmの格子解像度が必要であることが分かった。さらに、ダストの雲微物理過程とのより高度な結合モデルの構築の準備を進めており、またこれに並行してさらに高解像度のLESを実施し、計算データの整理を行った。研究成果は国内・国外の会議等で発表し、学術雑誌に印刷済みあるいは掲載決定の論文を完成させた。
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