研究概要 |
本研究は,これまで困難とされてきた台風の強度予報を実現させることを最終目標として,新しい『台風予測システム』の構築を目指すものである.本年度の主要な研究成果を以下に列記する. 1.大気-海洋-波浪結合モデルの構築 海面をインターフェースとして,大気モデル・海洋モデル・波浪モデルの三者間で相互に情報交換できる,オリジナルの大気-海洋-波浪結合モデルを構築した.これは,大気-海洋間の熱・水・運動量交換を詳細に表現できるモデルであり,実際に,伊勢湾における湾内流動場の計算によって高い計算精度を示した.また,波浪モデルの結合効果は大きく,表層流動場の精度改善にも貢献することを実証した. 2.大気-海洋-波浪結合モデルによる台風予報実験 構築された結合モデルを用いて,台風0416号の強度予報実験を行った.その結果,大気モデルを単体で使用した計算結果(海面温度固定)に比べて,より現実的な強度予測が行えることを明らかにした.海面境界プロセスの取り扱い方の相違により,再現される台風の構造は全く異なるものとなった.台風ボーガスや大気モデルの改良だけでは,高精度な台風強度予測は決して行えないことを明らかにした. 3.台風直下海面境界物理の解明 台風直下におけるエネルギー収支や海洋場構造を詳細に調べることで,台風直下海面境界物理について明らかにした.台風直下では,エクマンパンピングが卓越し,深層の低温水塊が表層付近にまで達していた.更に,台風東側では,強い表層流速(慣性流)により鉛直混合が卓越しやすい環境にあり,海水面温度の低温化に強く作用していた.精度の高い台風強度予測を行う上で,1次元海洋混合モデルではなく3次元海洋モデルを使用することが望まれる. 4.バランス台風モデルの構築 台風強度を経済的・高精度に予測するための『バランス台風モデル』の構築に向けて資料収集と,計算の枠組みの構築を開始した.
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