研究概要 |
地表面から100km以上に至る広い高度領域の気候システムにおける、積雲対流起源の大気重力波の役割を調べるため、雲を陽に分解する領域気象モデルを用いた数値実験と理論的研究を行っている。 複数の著者による積雲対流起源の重力波の数値実験結果を解析し、積雲起源重力波パラメタリゼーションにおける現在主流の方式のもととなった加熱応答計算と比較した。その結果、従来のパラメタリゼーションでは考慮されていない、運動量に関する非線形効果の重要性が明らかになった(Chun et al.,2005)。 2004年4-5月にインドネシアのスマトラ島で行われた集中観測を対象に、雲分解モデルによるシミュレーションを行った。その結果、スマトラ島西岸など、熱帯の多くの沿岸域で見られる、夜間に対流域が沖合に伝播する現象の再現に成功した。解析の結果、大気下層を水平に伝播する重力波によりプレコンディショニングが行われ、さらにコールドプール移流により対流域が移動することが示された。 さらに、上記の実験シミュレーションをもとに、積雲対流により励起され上方伝播する大気重力波を調べた。その結果、対流圏の季節内振動の特定の位相において重力波が成層圏に伝播しやすいことがわかった。これは、上方伝播しやすい位相速度が比較的速い重力波の励起が鍵となっている。引き続きその原因を調べ、普遍性についても検討する必要がある。 得られたシミュレーション結果を元に、電離層の研究者と共同で、対流起源の重力波が電離層スポラディックE層のプラズマ擾乱に与える影響も調べている。
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