研究概要 |
平成17年度は、インドネシア・スマトラ島の赤道大気観測所(南緯0.2度,東経100.32度)に設置されたVHF帯ウインドプロファイラー(赤道大気レーダー)とライダーの同時観測を実施した。赤道大気レーダーは大気の鉛直方向の運動(鉛直流)の直接観測が可能な特長を、ライダーはエアロゾルならびに巻雲の直接観測が可能な特長をそれぞれ持つ。両者のデータの比較により、上部対流圏及び下部成層圏における鉛直流とエアロゾル・巻雲の鉛直輸送の時間及び鉛直変動の比較が可能となる。観測は、2005年7月・2005年11月・2006年1月の時期に分けて実施した。2005年11月の観測では、鉛直流・エアロゾルならびに巻雲・温度のデータを同時に比較するためにラジオゾンデの観測を同時に実施した。 観測の実施にあたり赤道大気レーダーの観測モードを工夫し、鉛直方向に集中的にビームを指向させることにより高精度の鉛直流観測を実施した。また、鉛直流の推定精度を向上させるため、時系列データをスペクトルデータと同時に取得できるよう赤道大気レーダーの観測ソフトウェアを改善した。観測ソフトウェアの改善により2005年11月以降の観測で鉛直流の時系列データが取得できた。また、2005年11月以降の観測ではライダーは常時運用のミーライダーのほか、降水のない夜間には偏光解消度などの物理量が観測可能な大型レイリーライダーでの観測を実施した。 観測実施後は赤道大気レーダーの時系列観測データの処理プログラムを新たに作成し、時系列データから周波数スペクトルデータへの変換ならびに風速推定処理を行った。さらに、観測で得られた事例の一部につき赤道大気レーダーで得られた風速データと、ライダーで得られた偏光解消度や後方散乱比データとの比較を実施した。
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