インドシナ半島はアジアモンスーン域の中で最も早く雨期が始まる地域である。これが何故か、を解明することはアジアモンスーン研究の中でも重要な課題の一つである。本研究では、これまでほとんど着目されて来なかった温度逆転層(以下、逆転層と略記)の役割に着目してこの課題に取り組む。そのために、下の2つを行う。 (1)逆転層の季節変動に伴う熱力学的収支の実態把握、およびエアロゾル・雲との相互作用システムの理解 (2)現実の熱力学的収支を再現する鉛直1次元時間発展モデルの構築と数値実験に基づく逆転層の役割の理解 初年度である本年度は主として上記(1)を行った。 まず、逆転層とそれに関係する現象の実態を把握するために、過去の定常ラジオゾンデ観測およびGAME-T集中観測データを用いた現象の記述を詳細に進めた(物品費、旅費を使用)。成果の一部は2編の論文として国際学術誌に掲載が決定した。 また、1997年3月にタイで行われたラジオゾンデ集中観測のデータを用いて、熱収支解析を行った。その結果、従来の方法では鉛直流が過大評価されている可能性が指摘された。そのため、他の独立した鉛直流測定もしくは推定結果とを合わせて解析を進めることが必要であると判断した。その一つとして、ウィンドプロファイラーによる観測データを入手した(旅費を使用)。また、それらデータや計算結果を格納するための大容量ハードディスクを購入した(物品費を使用)。
|