地球極域の上部電離圏から磁気圏にわたる領域は、オーロラ粒子加速、イオンアウトフローなど様々な物理過程が引き起こされる興味深い領域である。これらの領域の物理過程を理解する上で、背景プラズマ密度は基礎的な物理量であるが、極域では通常希薄であるためプローブ等による観測が難しく、プラズマ圏のようなプラズマ密度分布のモデルの構築もまだ十分には行なわれていない。本研究課題では、「あけぼの」衛星の16年以上にわたる長期にわたる極域プラズマ波動観測データをもとに、極域における標準的なプラズマ密度分布モデルの構築を目指している。2005年度は、プラズマ密度導出作業を効率的に推進するため、既に整備されている「あけぼの」プラズマ波動データベースに、電子密度読取用のモジュールを付加し、1989年から1992年及び1995年から1997年分の極域ホイッスラー波動の上限周波数の読取作業を完了した。これらの電子密度データは現在ネットワークで試験的に公開を行なっている。またリクエストに応じて任意の期間の極域・プラズマ圏の電子密度データを提供する体制も整えられた。モデル構築に先立って、2005年に読取作業を行なった電子密度データをもとに、地球極域夜側の電子密度の高度分布について統計解析を実施した。その結果、電子密度及びそのスケールハイトの高度分布に顕著な太陽活動・太陽天頂角依存性が認められ、極域電離圏の長期変動の影響が数千kmの高度の磁気圏領域にまで及び、オーロラキロメートル電波などオーロラ活動に関連する諸現象の長期変動にも寄与していることが示唆される。これらの初期の研究成果は国際会議(IAGA 2005)並びに国内学会(2005年度SGEPSS総会)にて報告された。2006年度は電子密度の読取・データベース化を更に推進していくとともに、統計解析の結果をもとに電子密度モデルの構築に着手する予定である。
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