地球極域の上部電離圏から磁気圏にわたる領域は、オーロラ粒子加速、イオンアウトフローなど様々な物理過程が引き起こされる興味深い領域である。これらの領域の物理過程を理解する上で、背景プラズマ密度は基礎的な物理量であるが、極域では通常希薄であるためプローブ等による観測が難しく、プラズマ圏のようなプラズマ密度分布のモデルの構築もまだ十分には行なわれていない。本研究課題では、「あけぼの」衛星の16年以上にわたる長期の極域プラズマ波動観測データをもとに、極域における標準的なプラズマ密度分布モデルの構築を行った。2006年度は、2005年度に整備した電子密度読取ツールを使用して1993-1994年、1998-2005年分の極域ホイッスラー波動の上限周波数の読取作業を完了した。これらの電子密度データは既にネットワークで公開を開始している(http://stpp1.geophys.tohoku.ac.jp/Ne/)。さらにリクエストに応じて任意の期間の極域・プラズマ圏の電子密度データを提供する体制も整えられた。構築した電子密度データベースをもとに、地球極域夜側の電子密度分布の統計解析を実施し、太陽活動極大期・極小期及び日照・日陰のそれぞれのケースにおける電子密度高度分布の経験モデルを導出した。太陽活動極大期は極小期の10倍、日照時は日陰時の3倍程度の密度値を示し、かっスケールハイトの高度分布にも太陽活動・太陽天頂角依存性が見られた。また従来理論研究等に多用されてきた極域電子密度の近似式モデルが、本研究課題で得られた高度分布モデルのうち、特に太陽活動極小期・日陰のものに近いことも示された。これらの研究成果は国際会議(COSPAR 2006)、国内学会(2006年度JPGU連合大会、SGEPSS総会)並びに学術誌にて報告を行った。
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