これまで行われてきた地球磁気圏のグローバルMHDシミュレーションでは、電離圏は2次元の薄層として扱われていたため、その3次元構造を調べることはできなかった。そこで本研究では、電離圏を3次元に拡張したグローバルMHDシミュレーションコードを開発し、電離圏における電気ポテンシャル・電流の3次元分布が、磁気圏の変動と共にどのように変化するかを調べることを目的とした。 昨年度までにシミュレーションコードの開発は終了し、今年度は当研究の最終年度でもあることから、さまざまな太陽風パラメータに対してシミュレーションを行い、電離圏の3次元ポテンシャル分布・電流分布を導出し、その変動について調べた。その計算結果による成果として、電流の発散分布の変動があげられる。電離圏が均質な場合には、沿磁力線電流はPedersen電流と閉じるが、不均質な場合には、Hall電流とも閉じることが理論的に明らかになっている。本研究は実際にそのような電流の発散分布が得られることを数値的に明らかにした。特に、Harang discontinuityやカスプなどの様に電気伝導度分布が複雑なところでは非常に大きな電流の発散がみられ、Hall電流が電流系を閉じることに大きな寄与をしていることが明らかになった。これらの結果は、Asia Oceania Geosciences Society 2007 meeting等の学会で報告した。 また、今回開発したシミュレーションコードは、現在有志により進められている統合型シミュレーションコードに組み込むことが予定されており、磁気圏だけでなく、中性大気など他の領域と結合させたシミュレーションに向けて開発が進められている。このような他の研究との協調を進めることができたことは、本研究が有意義なものであったと考えている。
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