今年度、設備備品費によって導入した観測データ解析用ワークステーションを用いて、11年間(1995-2005年)の全ての大型短波レーダー網(Super Dual Auroral Radar Network : SuperDARN)の観測データをもちいた極域夏季中間圏レーダーエコー(Polar Mesosphere Summer Echoes : PMSE)の出現頻度の見積を行っている。また、昨年度から開発を進めている、大量データからPMSEの出現頻度を客観的に導出する為の自動検出アルゴリズムにさらに改良を加え、より正確にPMSEの発生頻度を算出できるようにした。このアルゴリズムでは、レーダーエコーの受信強度、ドップラーシフト、スペクトル幅などの情報を元にして、その他の散乱対象(電離圏E領域プラズマ密度不規則構造や流星からの散乱エコーなど)との弁別を行っている。大規模データに基づいた統計的な解析の結果、PMSE発生頻度の緯度分布を再現することができた。具体的には、緯度が高いところほど、PMSEの出現頻度が高いということが示された。また、北半球と南半球でPMSEの出現頻度を比較したところ、北半球のほうが南半球よりも高い頻度でPMSEが発生しているということが明らかになった。昨年度は、南極昭和基地のレーダーデータと北半球アイスランドレーダーのデータを比較して、同様の結果を得たが、今年度実施した全レーダーのデータを用いた解析でも、同様の傾向が再現され、PMSE発生頻度の南北差が確かに存在することがしめされた。
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