放射線帯の高エネルギー電子の消失過程において、波動粒子相互作用がどの程度寄与しているかを定量的に評価するために、波動粒子相互作用のプロセスを組み込んだ内部磁気圏のグローバルなモデルの開発を行っている。研究初年度においては、米国の研究協力者のところに滞在しモデル全体のデザインについての打ち合わせを行い、波動粒子相互作用の拡散係数テンソルの実装、およびモデルのモジュール間のインターフェースの設計を行った。 また、実際の磁気嵐時の数値計算を進め、経験的な圏内プラズマ波動のスペクトルを用いた電子のピッチ角散乱の計算、およびモデルによって計算されたPcl (EMIC)波動によるピッチ角散乱の計算を行った。計算の結果、Pclが特にMeV帯の電子の散乱に有効に寄与することを示し、Pclを励起するイオンのダイナミクスが高エネルギー電子の挙動に影響を与える可能性を指摘した。この結果は、国際会議(第2回Asia Oceania Geosciences Society)や国内の研究会で報告を行った。また、2001年10月に発生した磁気嵐時の数値実験の結果について、2本の国際学術誌に論文として発表した。 さらに、磁気嵐時の内部磁気圏の高エネルギー粒子の消失および増加の挙動について、太陽風の構造に注目した解析を行い、磁気嵐を引き起こす太陽風の構造の違いによって、高エネルギー粒子が異なった振る舞いを示すことを明かにした。この結果は、コ国際会議(American Geophysical Union)で報告するとともに、国際学術誌に論文として発表した。
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