研究課題
EUSO望遠鏡を用いて、宇宙線のみならず下層・中層大気での放電発光現象(スプライト、エルブス)も観測するため、焦点面光検出器の制御システムの基礎開発を行った。平成17年度は、(1)EUSO宇宙線観測時に較べ雷観測時にはマルチアノード型光電子増倍管(MAPMT)の光電子収集効率を1/1000以下にすれば良いことを特定し、(2)フォトMOSリレー内蔵MAPMTブリーダー回路による自動感度可変コントローラを試作した。これらの成果を継承し、平成18年度は以下の2つの課題に取り組んだ。1.昨年度試作した自動感度可変コントローラは光電子収集効率の低下率が1/200であったので、これを改良した。宇宙線観測時に-900Vの電圧をフォトカソードに印加するが、感度変更時には、第6ダイノードの電圧(-405V)を350μs以内にフォトMOSリレーを経由して印加する設計に変更した。回路を試作し検証した結果、MAPMTの出力信号は正常に光子計数され、光電子収集効率は約1/1140に低下することを確認した。このため、高電圧電源自体のON/OFFを行うこと無しにMAPMTの感度を変更する焦点面制御システムの基礎開発に成功し、EUSOによる雷観測の実現性を具体化したと結論できる。ただしこの回路によってフォトカソードは500Vの電圧変化を受けることとなり、劣化耐性の検証は今後の課題とした。2.自動感度可変コントローラを組み込んだフォトメータ、高感度CCDカメラ、およびVLF電波受信器からなる雷放電観測装置を製作し、雷放電発光を地上から実際に観測した。2006年3月に旧堂平天文台において観測を実施し、多数の雷光と、1例のスプライトを観測することに成功した。特にスプライトに関して、EUSOと同型のMAPMTで測光撮像が可能であることを実証した。この結果を日本物理学会2006年春季大会で発表した。ただし、この段階ではフォトメータに自動感度可変コントローラを未実装であったが、これを実装したフォトメータを用いて2007年3月に東京大学明野観測所において雷観測を行った。
すべて 2007 2006
すべて 雑誌論文 (6件)
京都大学基礎物理学研究所研究会 報告書 (in press)
第120回地球電磁気・地球惑星圏学会講演会 予稿集
ページ: B005-06
EOS Transactions AGU, West. Pacific Geophysical Meeting Supplement 87(36)
ページ: SA21A-05
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research A 564
ページ: 378-394
天気 53(5)
ページ: 53
日本地球惑星科学連合2006年大会 予稿集