研究概要 |
1.神居古潭帯の新冠地域に分布する付加体について野外調査を実施し,層序や変形構造を記載するとともに地質図と断面図を作成した.また,採取した試料の鏡下観察を行い,変成鉱物を記載した.その結果当地域の付加ユニットは,(a)低度の低温高圧型変成作用を被った,(b)海洋プレート層序の上部の珪質泥岩と砂泥質岩のみが断層で繰り返す覆瓦構造をとる,(c)未〜半固結時に層平行圧縮を受け,主要な変成作用以降に横臥褶曲を形成した,(d)上記覆瓦ユニットはほぼ水平な形で緑色岩卓越ユニットの間にナップとして挟まれる,等が明らかになった.これらの結果から当ユニットは,剥ぎ取り付加体として浅部で形成された後に構造侵食により沈み込み帯深部へ搬入され,低温高圧変成作用を受けて上昇したと考えられる.このため,構造侵食された物質は沈み込み帯深部で再付加することや,コーナー流型の個体物質移動が推定されること,および沈み込み帯での固体物質移動に構造侵食が重要な役割を担っていることが示される. 2.平成17年度に野外調査を行った前弧海盆堆積物(蝦夷累層群)について,不整合直上の堆積物から放散虫化石を抽出し,神居古潭帯の変成岩が上昇した年代をより正確に把握した. 3.本研究によって明らかにされた日高山脈西麓部の地質構造をまとめ,論文として公表したほか,別途論文を執筆している(平成19年5月投稿予定). 4.本研究で記載した付加体の構成岩相や地質構造をまとめ,単行本に分担執筆した(印刷中).
|