研究概要 |
本研究では,津波堆積物が形成される過程や分布傾向を定量的に評価するため,津波による堆積物の侵食,沖合方向への運搬,および津波堆積物形成過程を水理・数値実験により再現することを主目的としている.そして,これまでの津波堆積物の現地調査や試料の分析結果と本研究計画による水理実験の結果を,津波伝播および津波による堆積物の侵食量・堆積量に関する数値モデルに制約条件として与え,津波による堆積物の運搬・堆積に至るまでの一連の過程を,数値モデルを用いて定量的に復元する.これにより,海底や陸上での津波堆積物形成メカニズムを明らかにする. 本年度は,昨年度行った砂の粒径に着目した水理実験結果を,土砂移動数値モデルを用いて再現できるか調べた.数値解析には,高橋ら(1999)の移動砂層を掃流砂層と浮遊砂層に分けたモデルを用い,底面からの巻上げおよび両層の砂の交換は,水理実験によって定められた掃流砂量式,交換砂量式を用いた.解析の結果,数値モデルにおいて初期条件として水路底面に砂を敷き詰めた場合,ほぼ全ての砂が斜面上方へ運搬されてしまい,実験結果と異なる結果が得られた.一方,実験とは異なるが,初期条件として貯水タンク内に砂を均一に撹拌したと仮定すると,実験結果と特徴が類似する結果となり,数値モデル自体には問題が無いことが確認できた.こうした結果から,津波を想定した掃流砂量式および交換砂量式の精度に問題があると考えられる.また,砂の粒径変化に伴い移動量が系統的に変化する計算結果が得られた.実際の海岸の砂は混合砂であることから,各粒径に対応した掃流砂量式および交換砂量式を新たに提案し,混合砂を対象とした土砂移動モデルを構築する必要がある.
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