研究概要 |
今年度は,ケニア中央部ナカリ地域の中新統,バングラディッシュ・シレット地域に露出する中新統シワリク層群相当層,ネパール,カトマンズ盆地の第四系,シワリク層群を対象として,モンスーン影響下でできた地層を記載し,その形成過程を検討した. (1)ケニア・ナカリ地域での中新統の地質調査の結果,この地域の地層は昨年行った地域と比べて,やや大きな堆積盆で堆積し,年代はやや古いことがわかった.ここでは限られた層準で季節変動に伴う,氾濫原の沈水・干上がりの記録を解読できたが,全体的に季節変動はほとんど記録されていないことがわかった.これは,盆地が大きいために湖の水位上昇・低下が抑制されることが原因であると推定される. (2)バングラディッシュの中新統の調査では,従来,河川堆積物とされてきた地層を対象に調査を行った.残念ながら,詳しい調査の結果,地層中に潮汐堆積物の典型的特徴が見いだされたこと,重力流堆積物を含むことから,地層は海底の流路堆積物,およびその周辺の自然堤防堆積物であることが判明した.本来の目的とした調査をすることができなかったが,この地域の地層形成に関して,新たな知見を得ることができた. (3)カトマンズ盆地の調査では,年変動と思われる湖水準変動に伴う地層形成を具体的に示すことができた.とくに,河川は雨期には網状流,乾期にはごく小規模な蛇行流となり,雨期には蛇行流は沈水することが示された.それぞれの形成時の湖水準が2〜6mも異なるため,乾期と雨期で,地層ができる場がはっきり分かれることも明らかになった.また,このデータから過去の降水量の推定を行った.シワリク層群の調査からは,雨期・乾期の水面の変動に起因すると思われる,非常に独特な河川堆積物が見つかった.
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