研究概要 |
30〜25億年前の地殻で構成された東ダルワールクラトンは,33〜27億年前の地殻から構成された西ダルワールクラトンに付加したものと考えられており,ウル大陸中央部における沈み込み帯の広がりおよびその特徴を解明する上で重要な地域である.昨年,西ダルワールクラトン東部に沿った,東ダルワールクラトン内,南北500Km,東西300Km範囲の南北方向1セクション,東西方向2セクションにおいて,酸性深成岩類,中性〜塩基性岩脈および堆積性変成岩類の試料採取を行った.本年度は,これら採取試料を採取セクションごとに整理分類を行い,岩石記載および鉱物化学組成分析用の研磨薄片の作製などを行った.岩石記載の結果,特に北部セクションの塩基性岩脈の多くには,岩脈内に超塩基性岩の小片がさらに含まれていることが明らかになった.これらの超塩基性岩を詳細に研究することにより,東ダルワールクラトン下のマントルの情報をより直接的に得られる可能性が高まった.また,中性〜塩基性岩脈の中には,堆積性変成岩類をブロック状に取り込んでいるものも存在するため,堆積性変成岩類の変成年代は,酸性深成岩類および中性〜塩基性岩脈の貫入時期を明らかにするための基本データとなりえる.そこで,堆積性変成岩類の構成鉱物について鉱物分離を行い,Sm-Nd鉱物アイソクロン法による年代測定を行った.その結果,ほぼ26〜25億年の変成年代を持つことが明らかになり,酸性深成岩類および塩基性〜中性岩脈の活動と密接な関係が期待されることが分かった.現在,中性〜塩基性岩脈および酸性深成岩類についても,岩石記載および化学分析が進行中である.
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