研究概要 |
東アジアにおける三畳紀二枚貝化石の種構成や生存期間を明らかにする目的で東北日本やベトナムの下部三畳系で調査を行った.このうち北部ベトナムには,P-T境界の国際模式層序地点である南中国(媒山)の二畳系〜下部三畳系が連続して露出しているが,その地質や産出化石の詳細については,これまで全く知られていなかった.また,東北日本の三畳系から産する二枚貝化石については,ロシアとの共通性が指摘されていたが,化石の構成や優先種以外の産出報告がなかった,そこで本年度は,調査地域を宮城県北東部に露出する平磯層と北部ベトナムのホアビン省などに分布するホアタット層(Hua Tat Fm.)とパックホン層(Pa Khom Fm.),ランソン省に露出するランソン層(Lang Son Fm.)に限定して,これらの模式地と二枚貝化石を多産する連続セクションでデータを収集した. 平磯層では,波浪卓越型の外浜から陸棚環境を示す砕屑成堆積物からEumorphotis iwanowiやEntolium ussuricusを採集し,従来までの報告どおり,ロシアの沿海州から産出する種と共通するものが多いことを確認した.これに対して北部ベトナム産の二枚貝化石は,中国南部やマレーシア北部と共通する種が多く,Claraiaなどで特徴づけられる南方系(テチス系)のグループからなっている.特に下部パックホン層や最上部ランソン層の外浜堆積物からは,マレーシアの下部三畳系(Olenekian)で多産するClaraia intermedia multistriataが認められ,下部ランソン層では,アジア地域に特徴的なC.concentricaや世界各地の下部三畳系(Induan)から産するC.auritaやC.stacheiが確認された.なお,これらの成果は,現在Paleontological Researchに投稿中である.
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