研究概要 |
本年度の研究は,北部ベトナムや国内における下部三畳系の地質調査と学会および学術雑誌での成果報告が主な内容である.北部ベトナムの調査は,ハーザン省とランソン省に露出する下部三畳系の層序,古生物および堆積学的な研究を目的とし,両地域における下部三畳系の堆積環境を復元して,Claraia, Eumorphotisなどの二枚貝化石を採集した.さらに,これらの化石を研究室でクリーニングした上で種の同定を行い,ホンアイ層(Hong Ngai Fm. )下部の二枚貝生層序と化石群集を明らかにした.また,ランソン層についても同様の研究を行い,100km以上離れた地域の対比に成功し,堆積環境や化石群集の構成を比較した.なお,この結果によって,昨年度調査を行った南中国の国際模式層序断面地点(GSSP)の下部三畳系と北ベトナムの三畳系を比較することが可能になっただけでなく,GSSPでは露出していない浅海相や下部三畳系の上部を確認することができた. 学会発表は,日本古生物学会(島根)と日本地質学会(高知)で行い,古生物学会では中国南部のGSSPとその周辺で得られた古生物学および堆積学的な成果に加えて,北部ベトナムのハーザン省の調査結果を公表し,地質学会では,これらの成果にベトナムのランソン省のデータを加えて,化石群集の比較や二枚貝を用いた生層序について報告した.また,昨年度,Paleo. Res. に投稿した北ベトナムの三畳紀二枚貝化石群集の構成と東南アジアにおける国際対比についての論文が受理され,さらに本年度,地学雑誌に投稿した論文が12月に掲載された.なお,現在は,学会で発表した研究成果をPalaeogeogr. Palaeoclimatol. Palaeoecol. に投稿中であり,この成果に本年度の調査データを加えた研究結果を来年度の5月にアメリカで開催されるIGCP467で公表する予定である
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