研究概要 |
1.野外における物理・化学環境因子の連続観測 琉球列島のサンゴ礁海域における既存の物理・化学環境因子の地理的勾配・鉛直分布に関する文献を整理した。また、慶良間列島阿嘉島の礁原に観測定点を設置し、水温の測定を開始した。さらに定点の光量を測定するための装置を購入し、来年度から観測を開始する予定である。 2.生理耐性実験(予備実験) (1)環境因子を正確に制御する方法の検討:物理環境因子(水温・光量・水流)を制御可能な装置を購入し、それらを高精度に制御する方法を検討した。化学環境因子(塩分・pH・炭酸塩飽和度・栄養塩濃度)については、来年度も引き続き検討する。 (2)活性度の確立:本研究では、個体・個体群レベルの両面から大型有孔虫の生理耐性を検討し、それらの結果を総合することにより、生理耐性範囲を推定することにした。個体レベルでは、飼育観察による殻成長率と、本年度購入した微小酸素電極装置を用いた有孔虫の代謝量(溶存酸素変化量)を活性度の指標にする。個体群レベルでは溶存酸素法とpH-アルカリ度法による有機・無機炭素生産量を活性度の指標にする。 (3)単一の環境因子を制御した予備実験:Baculogypsina, Calcarina gaudichaudii, Marginoporaについて、光量と有機・無機炭素生産量との関係を個体群レベルで測定した。その結果、大型有孔虫3種の有機炭素生産量は,明条件下では共生藻の光合成により光量が増加するとともに増加し,暗条件下では有孔虫と共生藻の呼吸によりマイナスとなった.この結果は、光量がこれら3種の代謝に大きな影響を与えることを示し、水深分布を規制する主要因であることを示唆する。また、水温と炭素生産量との関係についても予察的に検討したが、まだ明瞭な結果が得られていない。実験方法の再検討とともに来年度詳細に検討する予定である。
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