研究概要 |
本研究では,含水および無水のパイロライトのポストスピネル境界をX線その場観察にもとづいて決定した.この相境界のプラペイロン勾配は,非常に緩やかであり,この結果は660kmの地震波不連続面の凹凸を説明することを困難にしている.しかしながら,含水パイロライトにおいては,この相転移が1473Kでは0.6GPa高圧に移動することが明らかになった.この相境界の移動によって,含水の沈み込み帯における660km不連続面が30-40kmの窪みを説明することができる.同様に,含水系では410kmの地震波不連続面に対応するカンラン石からワズレアイトへの相転移が1GPa程度低圧側に移動する. この研究では,カンラン石とワズレアイト間のH2Oの分配関係を明らかにした.それによると,ワズレアイトとカンラン石の分配係数は1473Kで4.0,1673Kでは2.1,そして1773Kでは1.3である.これらの値は,これまで報告されていた値(5-40)に比べて小さい.この結果によると0.21wt.%の水を含むカンラン石と0.84wt.%の水を含むワズレアイトが共存すると,410km不連続面の幅は35kmに広がる. この結果は,マントル遷移層にはかなりの水が存在することを示唆しており,最近の電気伝導度の測定結果と調和的である.
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