研究課題
下部マントルでの物質の挙動を正しく理解するため、放射光施設SPing-8に設置されている高圧発生装置SPEED-1500を用いた高温高圧変形実験を試みた。その結果、これまで困難であった下部マントルに相当する温度圧力条件での試料の歪をその場観察できるようになった。これにより、約23GPa、1400℃で下部マントルの主要鉱物MgペロフスカイトがAl_2O_3よりも塑性的に硬いことを示す予察的な結果を得ることに成功した。また、同様の実験により上部マントル最下部の主要構成鉱物リングウッダイトが約20GPa、1400℃においてAl_2O_3よりも塑性的にやわらかいことを示唆する結果を得ることができた。以上の結果より、地球の深さ660kmに存在する上・下部マントル境界では相当の粘性的不連続が存在し、この存在がマントルダイナミクスに大きな影響を及ぼしている可能性がある、ことが分かった。下部マントル物質の流動特性を正確に理解するためには、構成鉱物中における元素の拡散速度を明らかにしなければならない。このために必要な実験技術の確立を行なった。東工大、Magma Factoryに設置されているマルチアンビル型高圧発生装置Sakuraを用い、アンビルとして端欠辺長2mmのWC製立方体(住友電工)を、圧力媒体として1辺7mmのMgO+Cr_2O_3製八面体を用いて高圧を発生させた。Mg_2SiO_4、Mg_3Al_2Si_3O_<12>を試料として用いた高温高圧実験により圧力キャリブレーションを行い、1600℃の高温下で28GPaまでの高圧を安定的に発生させることができることを確認した。これは下部マントルにおける元素拡散を研究するために十分な温度圧力条件である。この技術を用いて、今後はMgOとSiO_2間の反応帯の成長速度を決定し、Mgペロフスカイトの中の主要元素の拡散特性を明らかにしていきたい。
すべて 2007 2006
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件)
Earth and Planetary Science Letters 256
ページ: 466-472
構造地質 49
ページ: iii-iv
Earth's Deep Water Cycle, Geophysical Monograph 168 (In : S.D. Jacobsen, S. van der Lee (Eds.))( American Geophysical Union, Washington DC)
ページ: 225-236